国際ロマンス詐欺師はお金を騙し取るだけではなく、相手の心も踏みにじる


お金を騙し取るだけではなく、心まで踏みにじる詐欺師たち

国際ロマンス詐欺

国際ロマンス詐欺の被害は日本でも近年急激に増加しています。そして被害者となるのは40〜60代の方が多いようです。これは単純に、この年代の方々は比較的貯金を蓄えているケースが多いためです。

詐欺師にしても、貯金などまだなさそうな20代を相手にしていても仕方がないわけです。ですのでお金を持っていそうな世代にターゲットを絞って詐欺を仕掛けてきます。しかも40代以上の年齢の方の多くはネット事情にそれほど詳しくないという事情もあり、若い世代よりも騙されやすいという傾向も見られるそうです。

いわゆるデジタルネイティブ世代というのはオンラインでのやり取りに非常に慣れています。そして年齢が若ければそれほどオンラインに頼らなくても、40代以上の方と比べると出会いの場合は多くなります。これは単純に独身の方の人数の違いとも言えるかもしれません。

そして近年は出会い系サイトよりも、SNSでの詐欺被害が増えていると言います。その中でもfacebookユーザーが比較的詐欺の対象になりやすいと言われているのですが、その理由の一つが、現在の日本では若い世代のfacebookユーザーが非常に少ないという点があります。

Facebookが日本で注目され始めたのはだいたい2007年前後で、今から20年近く前の話となります。最初はfacebookよりも日本ではmixiが爆発的にユーザーを増やしていたわけですが、その後facebookに乗り換えるユーザーが増えて行き、mixiのアクティブユーザーは一気に減り、逆に今度はfacebookがアクティブユーザーを爆発的に増やして行きました。

そしてその頃facebookを始めた中心世代がまさに今の40代、50代の方々だったわけです。そしてfacebookユーザーはfacebook上のグループで濃い繋がりを持っていることも多く、その世代に関しては今なおずっと使い続けている方も多いようです。

その油断もあると言われることもあります。つまり使い慣れているfacebookで自分が騙されるはずはない、と考えてしまうわけです。そしてつい先日も奈良県の40代女性がSNSで甘い言葉を繰り返されているうちに自分を見失ってしまい、詐欺師の口座に650万円を振り込んでしまうという被害がありました。

この被害者女性とやりとりをしていたのは東京で土壌研究をしているという40代のアメリカ人男性だったそうです。我々外野からすると、650万円も持っているのであればそれを送金する前に、相手が東京で働いているのだから、まずは奈良県から東京まで会いにいくべきだと冷静に考えられるわけです。

しかし「なんでも共感してくれた」ことでお子さんがいるシングルマザーであったこの女性は、6歳の娘がいるという土壌研究をしているこの男に夢中になってしまいました。そして自分の子供に妹(もしくは姉)ができることを夢見てしまったのだそうです。

それによって冷静さを失い、先物取引の投資を持ちかけられ、合計4回に渡り650万円を振り込んでしまったのだそうです。そしてお金を振り込んだ1ヵ月後にこの話を友人にすると「それは詐欺」だと言われ、警察に向かったとのことでした。

この女性は「嘘は嫌いだからやめてね」とずっと言い続けていたそうです。それでも嘘をつき続けた詐欺師。お金を騙し取ることはもちろん、この女性の心まで踏みにじったこの詐欺師を赦すことなど到底できるはずもありません。

しかし残念ながら一度振り込んでしまったお金は、不法に売買された口座から即座に引き出され、振り込み直後に詐欺に気づいてもそのお金が戻ってくることは99.999%ないと言えます。悲しいかなそれが現実なのです。

だからこそ出会い系サイトやSNSで、まだ会ったことがない人間とやりとりをする場合は、一人一人がまず詐欺を疑いながら慎重に行動していく必要があるわけです。でもせっかくの出会いの場でそんなふうにしなくちゃいけないなんて、すごく悲しくなってしまいます。

ルポルタージュ筆者:多村一馬
仕事で東京とロシアを行き来している頃、ロシア人の協力で国際ロマンス詐欺師を追い詰めた実話をルポルタージュ。 詐欺師を釣るために我々が準備したのは日本円で約100万円で、最終的には全額回収。
ロシア国内の協力者/ガブリエル:元FSB(旧KGB)職員の現ガードマン(Йошкар-Ола在住)、アルチョム:若き新聞記者(Яранск在住)

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